-Forest Times Special Feature- THE 24th ISSUE of 2024
~文化の継承と感動の創造~
著者:嶋本 かおり(淡路國生み創生神楽文化振興協議會 代表)
淡路國生み創生神楽は、1995年に発生した阪神淡路大震災からの復興を願い、地元住民、伊弉諾神宮氏子地域の有志により、国生み神話を基にした『国生み創生神楽』が誕生しました。そこには皆の祈りがありました。祈りとは五穀豊穣や大漁を祈願し、収穫に感謝を捧げることが原点であり、私たちにとっては生活の一部であり、本来、生きることと直結していました。しかし今、祈りが困った時の神頼みや自己実現のためのものになっているように思います。祈りとは、大自然には抗えないことを知っていた先人が残してくれた、人が慢心せずに感謝を忘れずに生きる生活様式であると考えます。
神楽の奉納を重ねていく中で、『神楽』や國生み神話などの『伝承』には先人が残してくれた知恵が沢山詰まっている。神楽の形だけではなく、意義も含めて伝えていかなければいけないと気づきました。意義を失ったものは、やがて形骸化して朽ちていくからです。
伝承内容として最も古い國生み神話が伝わる淡路島に生まれ育った私たちの使命は神楽の意義だけではなく、イザナギ・イザナミの二柱の神様が何を伝えようとしているのかを、子どもたちにも理解できるように伝えることです。そこで、2017年からは『淡路國生み創生神楽文化振興協議會』として、文化・芸術・教育の3本柱を軸に活動を広げ、現在は、月2回の稽古、月1回の畑体験、毎月22日、伊弉諾神宮にて夜神楽奉納、毎年9月23日は高千穂夜神楽・出雲神楽を招いての三大神話神楽祭にて奉納の他、地元小学校にて、太鼓・神楽クラブを実施。子どもたちと神楽や國生み神話について学び、ゼロから神楽をクリエイションし全校生の前で発表を行う活動をしています。
ゼロから何かを生み出すことは人間に与えられたギフトです。ゼロから創造、創作することは自分と向き合う作業です。その過程で自分を知ります。自分の得意不得意、好き嫌い、強み弱みを知ることで、得意・好き・強みは生かし、不得意・嫌い・弱みは自分以外の人に相談協力をしてもらい、全体として最高の形、パフォーマンスができるように力を合わせていくこと、コミュニケーションをとっていくことを身につけます。また想像を働かせることは誰かの想いに寄り添う心を育みます。
決してひとりよがりにならないこと。自分の柱を立てつつ、全体へも意識を巡らせ、相手に心を寄せていく、音で乗せていく、そうして作り上げた調和した空間には深い感動と喜びがあります。自我の欲求を満たして感じるそれらとは全く別のものです。実践を通して体感し体験することは大きな財産です。
創生神楽では型を決めすぎず、その場に必要な音を奏で、舞を舞うことで、どんな時でも臨機応変な対応ができる余白を作っています。そうすることが、実生活においても生きていく力になるからです。創生神楽は祈りを舞や歌、音楽で表現したものであり、和合へ導くものです。古事記や日本書紀にあるように、闇から光が蘇る『天の岩戸開き』の故事が『神楽』の原点です。戦争や災害など、世の中が暗くなった時にこそ、神楽を奉納することが重要ですが、私が考える神楽、和合とは、自分の中の陰陽(イザナギ・イザナミ)を統合することです。
良い悪い、好き嫌いなど相反する2極、2元の在り方から抜けること。闇も光、良いも悪いも同じ、この世界を構成する要素のひとつであると知る時に、自分は何の種を植えようか!と、クリエイター視点に立つことができ、外側の何ものにも振り回されずに自分に力を取り戻し、誰も何も批判否定しない生き方ができます。皆がそう在れば本当の平和へ繋がる。みんなが楽しく喜びに溢れて生きていくことができる。その方法を先人は伝承として、祭や祈り、書物や歌にして残してくれている。それらを今の時代に蘇らせて実生活、実社会で生かしていくこと、それを伝える役割があり、今後はそれらを世界中に発信していきたいと思っています。
私たち一人ひとりが2元の比較を抜けて和合統合の在り方で舞い、奏で、歌うことで、神楽というフィールドを作り出します。 そのフィールドに共に集う人々や場が調和し整うことで、自分軸を持ちながらも和合融合できる世の中になっていく、それらを実践の中で伝えていくことが最大の役割であると考えています。
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嶋本 かおりさん・笛奏者・神楽指導者
淡路國生み創生神楽文化振興協議會 代表
日本創生神楽連合会 事務局長
2011年より兵庫県淡路島・伊弉諾神宮にて、地元の子どもたちと、『三大神話神楽祭』(高千穂夜神楽・出雲神楽・淡路國生み創生神楽)にて神楽を奉納。毎月22日夫婦の日には、伊弉諾神宮にて『国生み創生神楽』を奉納している。
地元の小学校で神楽の指導に当たるとともに、国内の神社や世界の聖地にて創生神楽を奉納するなど精力的に活動している。
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