-Forest Times Special Feature- THE 19th ISSUE of 2023
~縁活~
著者:有江 加枝子(ひまわりサービス・有限会社プロシード)
三年前。母とお茶していた時の会話です。
母「終活ってあんまり好きな言葉じゃないわー。終わる活動ってなんか寂しい感じやもん」
私「そしたら何活やったら整理してみようって思えるー?」
母「何活もないなあ。だって全部大切やもん」
私「...」
あの頃の母は、モノの一つ一つに思い入れがあり丁寧に扱いながら持ち続けていました。30年前の服でも思い出があるから持っているだけで嬉しい。もし自分がいなくなっても勝手に捨てないでね。あんた何でも捨てそうやわ。と私に言っていました。「お母さんな、結婚してからお皿一枚割ったことないんやで。だからモノを大切にする気持ちわかってあげてな」と父は言いました。
そんな母が大切にしていたピアノを手放しました。自分の働いたお金で買って、子育ての合間に猛練習した愛着あるピアノです。最近弾かなくなりましたが、ずっと手元に置いておきたいと言っていました。
手放した理由を尋ねてみました。この1年ほどで腰と足が弱くなり、階段の上り下りがつらくなったそう。一日の大半を過ごす1階のリビングをもっと快適に使いたい。と決めたようでした。
「ピアノがなくなったらリビングってこんなに広かったかなって思ったのよ。ソファをピアノがあった場所に移動したらお父さんもこっちの方が落ち着くって。もっと早く手放してもよかったかなー」。母の顔は晴々としていました。家の中で転ばないようにと、床に直置きだった本や雑貨も片付けられていました。年齢とともに、大切にしたいものが変わってきたのかなと思います。
そこからの母の切り替えは早かったです。1階の和室にベッドを買いました。布団生活より起き上がりが断然楽になったと喜んでいます。
私には「2階に洋服を取りに上がれないから、1階の押し入れに収納スペースを作りたい」と相談がありました。
作業の手順は、まず押し入れのモノを全部だしているものといらないものに分けていきます。なに?この写真?誰の卒業証書?と懐かしいものも出てきます。お茶の道具は自分が信頼できる業者さんに売る。座布団は一組だけ残して捨てる。旅先で買ったものは捨てない。これはあんたにあげる。これ捨てる。これは迷うから一旦置いとく。
母はイスに座りながら私が手に取ったモノを判断していきます。残しておきたいものもたくさんありましたが、そこは母の想いを尊重します。小学生の頃に社宅に飾ってあった外国の木彫りの人形も見つかりました。「懐かしいからこれはもらっていいかな」。私の玄関に飾ることにしました。
そして、空いたスペースに引き出し型の収納ケースを買って、洋服を収めました。2週間後に使い勝手を聞いてみましたが「快適!」とのこと。捨てて後悔したものは今のところないようです。
手放すことで快適な生活を手に入れた母は「次は2階の荷物も頼むわね」と言ってくれました。次の世代に繋ぎたいものだけ残す。渡された人もその想いを受け取る。親の世代の整理収納は人の想いやモノの「縁」をつなぐ活動だなあと思います。私も母を見習って気に入ったものだけ購入し、丁寧に暮らしていきたいです。
有江加枝子(ひまわりサービス・整理収納アドバイザー)
神戸市在住。マンションで家族4人暮らし。
高3と中3男子の母。整理収納アドバイザー1級。
神戸市中央区のひまわりサービスで家事サービスと整理収納サービスを担当しています。
「お客様の心まで軽くなるお掃除」をモットーに家事サービスを提供しています。家事サービスってどんなの? 実家のお掃除頼んでみようかな? など、どうぞお気軽にひまわりサービスまでご相談ください。