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-Forest Times Special Feature-  THE 15th ISSUE of 2023

「生まれてくれて ありがとう!」

大好きだよ!自己肯定感の大きい子に!~

著者:村山 順子(一般社団法人 神戸暮らしの学校 代表理事)

 風薫る5月を迎えています。ベランダに泳ぐ可愛い鯉のぼり!“健やかに育ってね”との願いをいっぱい受けて、勢いよく泳いでいます。子どもは生まれてきただけで“全員百点満点”と教えて頂きます。

 筑波大学名誉教授で遺伝子工学の、今は亡き村上和雄先生は講演会でこう話されていました。「細胞一個が偶然に生まれる確率を計算すると、1億円の宝くじに100万回連続で当たるより難しい。その細胞を私たちは60兆個も持っているのです」と。

 奇跡的に選ばれて生まれてきた私たち!なんて幸せなことでしょう!そして生まれてきた子は純真無垢。私たち親も、元気に育ってくれたらもうそれだけで十分・・そんな思いだったと思います。

 子どもにとって多くの時間を接する親は、特別な存在です。私の母親は、宮崎市のケアハウスで先日、93歳で亡くなりました。頭もはっきりしていた母に私は、子どもの頃のことを尋ねたことがあります。母は18歳で私を生んでくれました。小学1年生の参観日。大勢のお母さん方が来ていました。私はなぜか嬉しくて、先生の質問の途中で手を上げて「ハイ!ハイ!」と。質問の内容もわかりませんので、答えることはできません。それでもまた「ハイハイ」と。よくそんな事がありました。その時の記憶は今も鮮明に覚えています。その時の事を母に「恥ずかしくなかった?」と聞くと、母から意外な言葉が返ってきました。

「順子、参観日に行くのが楽しかったよ!」と。

 もしもその時、母が私に「恥ずかしいから、しっかり先生の話を聞いてからにしなさい」と言われていたら・・多分、今の自己肯定感の大きい私はいなかったと思います。そんな母に、感謝しかありません。叱られたこともあったと思いますが、記憶にあるのは、祖父母、両親、その他周りの方々から愛情をいっぱい頂いて大きくなったということだけです。

 中学3年生で勉強の為、親元を離れ神戸の叔母宅に下宿しました。それも子どもの将来を思い、仕送りしてくれる親の大きな愛情を分かっていましたので、親に喜んでもらいたい!そんな気持ちで勉強に取り組みました。ですが、合格すると思っていた高校に不合格!しかし「私ってダメな子や!」などとは思わず、「仕送りしてくれる親に申し訳ない!じゃあ、どうしたら親に喜んでもらえるか?」を考え、通学する高校で優等生となることにチャレンジし実現!両親に喜んでもらうことができました。自然に“自分が大好き“な私になっていました。翻って、私自身の子育てはどうだったのだろうか?専業主婦、4人の子どもたちの良き母、良き妻になりたいと思い、子育てのサークルで学びました。ですが、その活動に夢中になり、肝心の子どもたちのことをしっかり見ていませんでした。

 それでもお陰様で、明るく素直な自己肯定感の大きい子どもたちに成長。それは、近所に住んでいた村山の両親のサポートがあればこそ、だったと思います。また、道ゆく年配の方が、幼子を連れて歩く私に「子どもはすぐに育っていくからね、もう少しだからね。楽しみだよ」と。その言葉も、当時は素直に受け止められず、「こんなに大変なのに、無責任な事を言って・・」と思っていました。しかし、本当にそうでした。子どもの成長は早く、親がしてあげられることはとても少なくなっていました。両親が私にしてくれたようには、我が子にしてやれていません。もう一度、やり直せるものなら・・と、子どもたちに申し訳ない気持ちになることがあります。

 今、お子さんと一緒に暮らせる時に、自己肯定感の大きいお子さんに。親の声かけ、褒める、認める、意見を聞いて理解する・・など、されてはいかがでしょうか。思春期を迎えると、面と向かっては素直に話せない、聞いてもらいにくいことも。そんな時は、素直に書ける「手紙」をお勧めします。子どもの心にも静かに沁み入ります。子どもの日、誕生日、入学、卒業などの記念日に、親からの嬉しい手紙を贈る習慣を作りませんか。

 子どもを思う親の真心と、信じる気持ち、認める気持ちがあれば、自己肯定感の大きい子どもに育っていくと思います。何かに躓いても、自力で起き上がり、行動できるように思います。子どもたちの一番の応援者は両親、祖父母だと思います。今、懸命に頑張っていらっしゃるお父さん、お母さん、大丈夫ですよ!子どもたちはそんなお父さんお母さんが大好き。見てくれています。ご自身が上機嫌で居られるように“自分を褒めながら”笑顔で、お健やかにお過ごしくださいますよう。


著者プロフィール


村山 順子 さん 鹿児島県沖永良部島出身

  • 有限会社プロシード 代表取締役 会長
  • 一般社団法人神戸暮らしの学校  代表理事

 

13歳のときに単身で沖永良部島から神戸に出てきて就学。短大卒業後小学校の教諭となる。青春時代を子供たちとの学校生活で過ごし、結婚のため退職、専業主婦となる。

 

夫の急逝をきっかけに52歳で家事代行サービス会社を起業。起業を決意するきっかけが、夫からの手紙だったことから、多くの人に手紙で大切な人に素直な気持ちを伝えて欲しいと「心を届ける手紙のセミナー」を2004年よりはじめる。

 

手紙のセミナーは、2019年には全国47都道府県で開催され、2021年現在10,000人以上の方が参加されています。 

 

著書:「人生を変えた10行の手紙」(ぱるす出版)

   「60歳の約束 見えますか、聴こえますか、これでいいですか」(創英社/三省堂書店)