-Forest Times Special Feature- THE 12th ISSUE of 2022
~洋蘭で暮らしに彩りを~
著者:西口 進一(カトログ !! ~ カトレヤ交配種のブログ ~管理人・運営者)
自己紹介などで「洋蘭を栽培しています」「趣味は洋蘭の栽培です」と言いますと、必ずと言っていいほど、「洋蘭って難しいでしょ?」「以前、贈り物の胡蝶蘭の栽培にチャレンジしてみたけど枯らしてしまって…」とおっしゃる方がおられますが、じつは、ちょっと認識を変えるだけで、洋蘭の栽培が他の植物以上に簡単なものだということに気付いてもらえます。
まず、洋蘭の仲間の多くは、木の幹や岩の上に根で張り付いて生活する着生植物です。現在、日本国内で園芸や贈答用に流通している洋蘭の代表的な種類には、胡蝶蘭、シンビジューム、デンドロビウム、カトレアなどがありますが、これらはいずれも着生植物になります。では、着生植物の生態はといいますと、まず、生育に必要な水分の補給は、木の幹や岩に張り付いた剥き出しの太い根から空気中の水分や雨などによるものです。一方、人工的に栽培する場合は、その空気が大好きな根を植え込み材料(水ゴケやバークなど)で包んで狭い植木鉢に押し込んでしまうのですから、当然、根は窒息状態になってしまいますし、その上、水をジャブジャブ与えれば、自ずと根は腐って枯れてしまいます。お世話が好きな人ほど、水のやり過ぎで枯らしてしまうという事態になるワケです。
しかし、「洋蘭は着生植物で他の園芸植物とは違う」という認識を持って栽培・管理を行えば、水やりの頻度も少なくて済み、容易には急に枯れることも無く、他の植物ほど手間もかからず、それほど栽培が難しい植物ではないことに気が付くはずです。
また、洋蘭には寿命が樹木的に長いものが多く、前述したポイントをおさえ、冬季に日当たりの良い場所で10度以上の気温が確保できれば、ほとんどの品種の洋蘭は容易には枯れず、大切に育てれば一生付き合える良き癒しのパートナーになってくれます。
洋蘭にも愛好団体があり、神戸には神戸蘭友会という主に神戸市民による愛好団体があるのですが、さらに全国規模の組織で日本・蘭協会という会もあり、昭和30年に、かつての神戸住吉町で産声を上げています。
その創立の提唱者は武田薬品工業の創業者、武田長兵衛氏で、当時は月に1回程度、京阪神間の洋蘭の愛好家を武田邸の広間に招いて、和気あいあいの団欒の中、行われたものだったそうです。
ちなみに、創立当初の日本・蘭協会の会長は、甲南大学総長 荒勝文策氏で、神戸では他に、大林義雄氏(大林組二代目社長)、岩井氏(日商岩井会長)、岡崎忠氏(神戸銀行会長)などの錚々たる面々が会員に名を連ねておられました。
この写真の洋蘭は、パメラヘザリントン コロネーションという名前のカトレアなのですが、写真右上の日付をご覧下さい。あの阪神・淡路大震災発生前夜の1995年1月16日です。震災直後の当時の様子をご存知の方は、憶えておられるかと思いますが、電気・ガス・水道が止まった真冬の小さなビニール温室の中で、通常では考えられないことなのですが、このカトレアは枯れずに耐えてくれました。そして、この阪神・淡路大震災の記憶を宿すカトレアは、現在でも筆者の元にあり、大切に栽培しており、以来毎年、1月中旬頃に、香しい極大輪花を咲かせてくれています。
現在、コロナ禍以降、ご自宅で過ごす時間が増えている方が多いかと思います。そこで、ぜひ、ご自宅にも、まずはミニ洋蘭と呼ばれる小型の洋蘭を1鉢いかがでしょうか?きっと、可憐で華やかな洋蘭の花が、あなたの暮らしに一層、彩りを添えてくれると思いますよ。
西口 進一(Shinichi Nishiguchi)
兵庫県尼崎市出身、兵庫県神戸市在住
『カトログ !! ~ カトレヤ交配種のブログ ~』管理人・運営者
洋蘭のカトレアの中でも大輪系カトレア交配種が専門で栽培歴は1994年からになりますが、2004年に香川県在住の大輪系カトレア交配種の育種家さんにお会いし、カトレアとの新たな関わり方を教えていただき、それ以降、大輪系カトレア交配種の育種交配の世界に、すっかり夢中です。
現在、主にオレンジ(サンセットカラー)系巨大輪花の創出を目指して、十数交配し、イギリスにある英国王立園芸協会(RHS)への登録を済ませたオリジナル品種もあります。
・「世界らん展日本大賞2011」公式サイト・ピックアップブロガー
・NHK-BSプレミアム ドラマ「植物男子ベランダー」に画像提供(2015年8月)
・洋蘭情報誌「NEWORCHIDS(ニューオーキッド)」にて「大輪系カトレヤ交配種 『新時代の胎動』」執筆・投稿(2011年11月/2012年1月)
・「神戸どうぶつ王国新春洋らん展」プロデュース(2020年1月)
カトログ !! ~ カトレヤ交配種のブログ ~:https://blog.goo.ne.jp/nishiguchi4714