-Forest Times Special Feature- THE 8th ISSUE of 2022
~亡き父に伝えたい感謝の気持ち~
著者:村山順子(一般社団法人 神戸暮らしの学校 代表理事)
もうすぐ父の日ですね!私にとっては、「父の日にプレゼントを贈れるって幸せなことだなぁ〜」と、思う時でもあります。
鹿児島県沖永良部島に住んでいた父は18年前、交通事故で亡くなりました。耳の聴こえなかった父。自転車で買い物に行く途中、サイレンを鳴らして訓練中の消防車との事故でした。突然の、父との悲しい別れでした。お洒落でハンサムで、字も絵も、写真も、釣りも上手な父でした。
5人姉妹弟の長女の私は、父にとても可愛がってもらいました。毎朝学校に行く前には、鉛筆を小刀で綺麗に削ってくれていました。そんな中、私は13歳で勉強のため沖永良部島から1人で神戸に出て、叔母宅に下宿し学校に通うことに。当時実家は小さなホテルを経営していたため、夏休みに帰る時は「大勢のお客さんで忙しい母を、どうしたら楽にさせてあげられるのか!」と、そのことばかりを考え、仕事の手伝いを優先していました。父の話をゆっくり聞くこと、話すことができず、申し訳ない娘でした。
今年1月、アカデミー賞を受賞した映画『コーダ あいのうた』を観ました。4人家族のうち妹1人が健常者、あとは全員耳が聴こえませんでした。お兄さんが健常者の友人と飲みに行くのですが、友達が他の人と話していることが分からず疎外感からの喧嘩に。
その場面を観て、父のことを思い出しました。父は、お祝いの席に招待されると喜んで行くのですが、会話に入れないこともよくあり、帰ってくると大荒れ。祖母は熊本出身。沖永良部島に幼い頃から気を許せる親戚がいなかった父は、「つや子(母の名前)には兄弟がたくさんいるけど、僕は1人ぼっち!」と。
映画の中のお兄さんは、むしゃくしゃした気持ちをスマホで恋人にメールをし、気持ち受け止めてもらい、愛を育み結婚へ!もし、今父が生きていたら・・どんなに父の人生が豊かなものになっていたことかと思います。メカに強い父。スマホを使いこなし、動画を作り、メールで子どもや孫たちと自由に会話を楽しむことができただろうになぁ〜と。
父の日に、お洒落な父の好みに合いそうなブランド物のシャツを探し回って、妹と一緒に送っていた頃のことが懐かしいです。贈り物にはいつも父への手紙を添えていました。今は品物は届けられませんが、感謝とお詫びの手紙を書いて供えます。
『お父さん!ありがとうございます!そしてごめんなさい!』
村山 順子 さん 鹿児島県沖永良部島出身
13歳のときに単身で沖永良部島から神戸に出てきて就学。短大卒業後小学校の教諭となる。青春時代を子供たちとの学校生活で過ごし、結婚のため退職、専業主婦となる。
夫の急逝をきっかけに52歳で家事代行サービス会社を起業。起業を決意するきっかけが、夫からの手紙だったことから、多くの人に手紙で大切な人に素直な気持ちを伝えて欲しいと「心を届ける手紙のセミナー」を2004年よりはじめる。
手紙のセミナーは、2019年には全国47都道府県で開催され、2021年現在10,000人以上の方が参加されています。
「60歳の約束 見えますか、聴こえますか、これでいいですか」(創英社/三省堂書店)
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