特集記事


-Forest Times Special Feature-  THE 5th ISSUE of 2022

「大切なあなたに伝えたい」

~私が手紙を書く理由~

著者:村山順子(一般社団法人 神戸暮らしの学校 代表理事)

「手紙のセミナー」では、私がなぜ手書きの手紙の大切さ、素晴らしさを伝えたいと思って活動しているのか・・・をお話しします。

 

25年前、私は最愛の主人を亡くしました。朝、広島へ出張に出かけたのですが、夜のレセプションで倒れたとの連絡が。子どもたちとすぐに広島へ向かいましたが、間に合わず・・・52歳になったばかり、心筋梗塞でした。4人の子どもたちは全員学生。子どもたちを頼む!は、わかるけど、何か、何か私に言いたいことがあったのでは・・・”と、突然の夫との別れが受け入れられなくて鬱状態に。人に会いたくない、涙が止まらない・・・主人の心を訪ねる日々でした。でも、「あったのです!主人からの手紙が! ! 」


最後の手紙


亡くなる1ヶ月前の私の誕生日に、主人の行きつけのお店に一緒に出かけ帰宅後、夜中の12時過ぎにいつも通り書いてくれた10行ほどの短い手紙が! こんな事が書いてありました。

  

『順子さん49回目の誕生日おめでとう!これからも大いに活き活きした順子を見るのが僕にとっても心嬉しいものです。いろいろ言いますが、気にせずに己の道を歩んでください。そのためにも身体とバイクの運転にはくれぐれも気をつけてください。今日は付き合ってくれてありがとう!本音は、とにかく順さんをどこへでも連れて、見せびらかしたい気持ちの表れだと思ってほしい。(行きつけのお店を初めて三軒もハシゴして、スナックのママさんや、マスターに私を紹介したこと)今後ともお互い元気で、信頼しあって年を重ねてゆこう。誕生日に際して  勝保』

心が込められた最後の手紙
心が込められた最後の手紙

試練を乗り越えて


改めて手紙を読み直し、ハッとしました。主人は今の私を「活き活きしている」って言ってくれるかしら?「皆に見せびらかしたい!」って思ってくれるかしら?そう考えると沈んでいた心がシャンと立ったのです。ですが何度も泣き、その度に主人から貰った短い手紙を思い出し、立ち上がる事ができたのです。

 

主人が遺してくれた10行ほどの手紙は、私に生きる勇気と希望を送り続けてくれています。尊敬する主人に恥じない誠実な生き方をしたいと思い、自宅でお掃除の仕事を始めました。手書きの手紙に救われた私は、仕事が軌道に乗り始めた頃、「仕事以外に私にできる社会へのお役立ちは“手紙”」だと思いました。2004年の春、「大切な人に手紙を書きませんか?」と事務所の入り口に張り紙をしました。ご近所の方が5名ほど集まってくれ「手紙のセミナー」が始まりました。

セミナー風景
セミナー風景

大切なあなたに伝えたいこと


多くの方々のお力添えを頂き、20197月、日本全国47都道府県で、手紙の講演や、一緒に手紙を書くワークショップをさせて頂きました。“誰でも書ける手紙!だけどその人しか書けない手紙!”『手書きの手紙は、優しい心の贈り物』手書きの手紙の大切さをお伝えするのは、亡き夫が遺してくれた私のライフワークです!インターネット全盛の今、『誕生日や結婚記念日などに手書きの手紙やカードを書いて贈る習慣が、できると良いなぁ!』と思い、これからも続けてまいります!そして、いつか主人のもとに行った時、「順さんよく頑張ったね」って褒めてもらえるように今をいきいきと、生きていきます!

研修での一コマ
研修での一コマ

著者プロフィール


村山 順子 さん 鹿児島県沖永良部島出身

有限会社プロシード 代表取締役 会長

一般社団法人神戸暮らしの学校  代表理事

 

13歳のときに単身で沖永良部島から神戸に出てきて就学。短大卒業後小学校の教諭となる。青春時代を子供たちとの学校生活で過ごし、結婚のため退職、専業主婦となる。

 

夫の急逝をきっかけに52歳で家事代行サービス会社を起業。起業を決意するきっかけが、夫からの手紙だったことから、多くの人に手紙で大切な人に素直な気持ちを伝えて欲しいと「心を届ける手紙のセミナー」を2004年よりはじめる。

 

手紙のセミナーは、2019年には全国47都道府県で開催され、2021年現在10,000人以上の方が参加されています。 

 

著書:「人生を変えた10行の手紙」(ぱるす出版)

   「60歳の約束 見えますか、聴こえますか、これでいいですか」(創英社/三省堂書店)


関連記事:『心を届ける手紙(1)~おじいちゃん・おばあちゃんが、お孫さんに書く手紙

     『心を届ける手紙(2)~子どもさんから、親御さんに書く手紙