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連載 村山 順子さん 『心を届ける手紙(3)』

「心を届ける手紙」は疎遠になった友情を取り戻す“きっかけ”になります。(写真はイメージです)
「心を届ける手紙」は疎遠になった友情を取り戻す“きっかけ”になります。(写真はイメージです)

「友人・知人に書く手紙」


 今回は、私が起業する前に勤めていた会社の元社長との絆を、1通の手紙が優しく結び直してくれた話を書かせて頂きますね。

 

 主婦の勉強会で出会い、親友になった元社長。彼女の「額に汗する仕事を通して私たちの人格を磨いていかない?」という呼びかけに感動。専業主婦数人でお掃除の仕事を始めました。少しずつ軌道に乗り始めた頃、阪神淡路大震災!取引先が殆どなくなる中、会社を思う一心で、した事もない飛び込み営業に。何とか大きな仕事を次々と決める事ができました。しかし、急成長の中で会社の方針が、創業の理念“誠実な仕事”から心ならずも逸れていっていました。何度進言するも聞き入れて貰えず・・

 

 「社長の仕事の仕方について行けません。辞めさせて頂きます」と。円満退社できませんでした。その後、前の会社に不義理な事は一切しないと自分で決め、52歳直前、1人自宅でお掃除の仕事を始めました。ある時、偶然元社長と出会い、当時の事をお詫びしようとするのですが、遠くから「村山さん!」と・・以前は親しみを込めて「順さん」と呼んでくれていましたのでそれ以上踏み込めず、挨拶程度しかできませんでした。3度同じような事があり、私の心は萎え、これ以上傷つきたくない・・と、元社長との事は心の奥底に封印することとなりました。

 

 そんな中、2011年の年末、ある勉強会で聴いた「職恩」の話。“誰のおかげで今の仕事ができるのか!その人にどうやってお礼しているのか、それは一度だけなのか!”と。私は衝撃を受け、元社長の事を思い出して居ても立っても居られなくなりました。電話してみましたが年末で忙しくされていたため、“手紙を書かせて頂こう!”と。

 

 「社長ご無沙汰しております。今朝、経営者の勉強会で”職恩“の話しを聴きました。誰のおかげで今の仕事ができるのか!その人にどうやってお礼をしているのか?と言われ、私は社長への感謝と、申し訳なさでいっぱいに誰でも起業できると思っていましたが、そうでは無く、全てを私に任せてくれた社長の懐の深さ広さに気づいていながら、心からのお礼とお詫びが言えませんでした。是非お会いしたいです!」と書いて投函しました。年が明け、元社長から電話がありました。第一声が「順さん今から行っても良い?」。13年ぶりに聞く元社長の「順さん」でした。お陰様で、今では相談したり、食事に行ったりする間柄になっています。

 

まずは素直な気持ちで、相手に語り掛けるように書いてみましょう。
まずは素直な気持ちで、相手に語り掛けるように書いてみましょう。

 手紙は、ゆっくり相手のことを思い出し、面と向かっては照れ臭くて言いにくい事も、素直に伝えられます。言い忘れてしまう事も、言わなければ良かった!という事もありません。相手もゆっくり読み返す事ができます。元社長と私の心に封印を解いてくれたのは、「素直な気持ちを書いた手紙」でした。

 

 あの世まで封印したまま・・とまで思っていましたが、絆を結び直す事ができました。お陰様で、今は心晴れやかに生活させて頂いています。「手紙」って良いですね! 


著者プロフィール


村山 順子 さん 鹿児島県沖永良部島出身

有限会社プロシード 代表取締役 会長

一般社団法人神戸暮らしの学校  代表理事

 

13歳のときに単身で沖永良部島から神戸に出てきて就学。短大卒業後小学校の教諭となる。青春時代を子供たちとの学校生活で過ごし、結婚のため退職、専業主婦となる。

 

夫の急逝をきっかけに52歳で家事代行サービス会社を起業。起業を決意するきっかけが、夫からの手紙だったことから、多くの人に手紙で大切な人に素直な気持ちを伝えて欲しいと「心を届ける手紙のセミナー」を2004年よりはじめる。

 

手紙のセミナーは、2019年には全国47都道府県で開催され、2021年現在10,000人以上の方が参加されています。 

 

著書:「人生を変えた10行の手紙」(ぱるす出版)

   「60歳の約束 見えますか、聴こえますか、これでいいですか」(創英社/三省堂書店)