森美樹さん 『孤育てからの脱却(3)~豊かさを育む遊びの力~』
はじめまして。子育て支援団体プレジャーガーデンの森美樹と申します。一人目の出産を機に幼稚園教諭を退職し、育児のかたわらリトミック講師資格を取得し、現在はブランチ神戸コミュニティルームにて育ちを支える親子リトミックを毎月開催しております。
親同士も子どもも、コミュニケーションを大切にしたプログラムをみんなで楽しんでいます。
育ちを支える親子リトミック
幼稚園教諭の現場でぶち当たったことは子どもの感じる『遊びを通して学んでいること』と大人が感じる『成長の姿』です。子どもは遊びを通して体や心が大きくなっていきます。しかし私もそうですが目に見えない成長に多々不安になりました。『目に見える出来ることで成長を評価する』大人の心に反応して子どもの表情が曇ることがあります。
今までの教育の世界では、文字が読める・計算ができる、などという目に見える能力を評価する“認知能力”が良しとされてきました。しかし、情報社会の発展と共に今は“VUCA(ブカ、ブーカ)※”の時代。既存の価値観は通用しなくなってきており、教育の現場でも“非認知能力を育む教育”を重点に置くようになっています。創造性や協調性、自分で考え決断する力、自分をコントロールする力や精神力、集中力などです。
※VUCA(ブカ、ブーカ)=社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のこと(造語)
私たち親世代が受けてきた教育は今は通用せず、型にはめられたものは今はロボットがこなしてくれ、多くの仕事が人の手を離れているのです。今はそのプログラム構築や新たなシステムを操作する人間が必要とされているのです。でもそんな自由な発想や創造性は何にでも楽しんで関わろうとする姿は子ども自身が本来持っているものなんですよね。それを大人の固定概念に当てはめて“これはこうでなければならない”という形式の押し付けが先に述べた子どもの生き生きしさを奪い、表情を曇らせてしまうのです。
幼稚園教諭の時代に音楽指導がどうしても一辺倒で押し付けのようになってしまい、音楽が大嫌いでした。保育一年目の時に「あなたのクラスは本当に歌が下手ね。」と恩師である当時の園長先生にお叱りを受けたことも。(笑)退職後はすぐに年子で二人目を授かり、慌ただしい育児生活を送っていましたが、妊娠を機に退職を決めたので、仕事に対して未練を感じていました。その時に以前から興味のあったリトミックの勉強を始め、育児の合間に資格を取得しました。
音楽教育だと思っていたリトミックは保育指針にある【環境・言葉・表現・人間関係・健康】全て網羅されており、自然や生活、動植物と身近なものをテーマに一歳児であっても、その子なりのペースで応答的な関わりの下、子どもが感じるままに音楽や歌に合わせて表現を楽しんでいます。創造し、自己選択自己決定し、集中し注意して遊びとして反応を楽しんでいくこと。ずっと探していた正解は子どもたち自身の豊かな表現の中にあったのです。それを知った今はどんな風に遊んでいこうか。また遊びの中で子どもたちの自由な発想をキャッチしたときに、これをどう展開させようか。ワクワクしかありません。
悩んでいたのは形式ばった音楽指導であり、子どもと楽しく展開させていけるのは音楽表現でした。また、遊びの中では親子のスキンシップをとても大切にしています。触れ合い遊びは表情がスッと柔らぎ、親子の安らぎの時間にもなります。いつか保育現場の方々とこの楽しさを共有したいとも考えています!リトミックを通して子ども本来が持つ素晴らしい力を親子で楽しむことで、次世代の人材を育て、豊かな親子関係のきっかけになれば。そう願っています。
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