『孤育てからの脱却』
髙田佳代子さん 『孤育てからの脱却(1)~子育て支援は、親支援~』
長引くコロナ禍は、わたしたちの生活のあらゆる場面に影響を及ぼしています。感染症に起因するライフスタイルの変化は、様々なストレスを与え続けています。対面でのコミュニケーションが難しくなったコロナ禍において、とりわけ育児をしている家庭は「孤独」を強いられています。いわば『孤育て』ともいえる育児を乗り越えるには、どんな支えが必要なのでしょうか? かつて『孤育て』を経験し、試練を乗り越えた一人の女性起業家の手記をご紹介します。
Forest Timesをご覧のみなさま、はじめまして。一般社団法人Babyガーデン 代表の髙田佳代子と申します。神戸市垂水区で神戸市認可の小規模保育園を運営しています。これまで、就園前のお子さまと保護者を対象にした子育てひろばや、美術館や企業・大学への出張一時保育などの活動を展開して参りました。
コロナ禍が長期化する中で、子育てにまつわる悩みを抱える方がたくさんいらっしゃると思います。そんな方々に、私の体験や活動が少しでもお役に立てばうれしく思います。
私のヒストリー
結婚前は幼稚園で働き、たくさんの子どもたちと接してきました。もともと子どもが大好きな私にとって、この仕事はいわば天職でした。数年後に結婚し、幼稚園を退職。二人の子どもに恵まれました。
幸せな生活を送るさなか、阪神・淡路大震災に見舞われました。子どもが2歳と0歳のときのことです。その当時、私は長田区北部に住んでいたのですが、昼になっても長田の空を覆う真っ黒な煙が今も脳裏に焼き付いています。
その後、縁あって震災復興に関する仕事に携わりました。仕事を通じて被災者や被災者支援グループと出会い、互いに支えあいながら暮らしていくことの喜びや尊さを学びました。
子育ての孤独
いっぽう私は、夢に描いていた楽しい子育てとは裏腹に震災後、不慣れな子育てをする中で、心が孤立し、日ごとに孤独感が増してゆくのを実感しました。毎日のように友だちに電話をかけ、車を走らせては会いに行き、行き場のない感情をぶつけていました。自分の子育てを助けてくれる「支え」が必要だったのです。
子どもが大好きな私でさえ、自分の子どもが負担になることがありました。夫は仕事が不規則で、家にいる日は体を休ませるために私は子どもと公園にでかけるなど「自分が頑張らないと」と一生懸命になり、頑張るが故に気持ちがいっぱいいっぱいになって時に子どもに感情をぶつけてしまうことが幾度となくありました。
子育て支援は、親支援
親も一人の人間です。子どもにとって、いつも完璧なお手本を示せる存在ではありません。まず親の心に「余裕」がなければ、豊かな子育てをすることはできません。そして「余裕」を持つための「環境」がなければ、心に豊かさを育むことはできないのです。
私は自分自身の経験から、「お父さん」や「お母さん」が安心して子育てに携わる「環境づくり」が大切だと思っています。例えば「親が一人になれる時間をつくり出すこと」「弱音を吐きだせる場所を提供すること」「子育てに悩む方々が思いを共有できるコミュニティを提供すること」などです。
人は、独りでは生きてゆけません。「子育ての力は、頼れる力」ーもしあなたが子育てに悩んでいるなら、私はあなたの力になりたいと願っています。
一般社団法人Babyガーデン、小規模保育園あんよでは「誰もが心ゆたかに子育てできる環境づくり」をモットーに下記のような取り組みを行っています。
著者プロフィール
小規模保育園あんよ 髙田佳代子さん
神戸市出身。
子どもが好きで幼稚園教諭の仕事に就く、結婚を機に退職。
阪神・淡路大震災の復興関連の仕事に携わったことや自らの経験から子育て支援の必要性を痛感し、任意団体を立ち上げてNPOに。
その後、一般社団法人Babyガーデンを設立。
2018年、BRANCH神戸学園都市において「小規模保育園あんよ」を開園。現在に至る。